志賀理江子のヒューマン・スプリングを観た|圧倒的な生命力

 

こんにちは、パープルです。

 

今年の春に、東京都写真美術館にて志賀理江子の写真展『ヒューマン・スプリング』が開催されていました。

 

今回はそのレポ記事です。

 

相変わらず圧倒的な作品群でした。

 

志賀理江子が生み出してきたもの

私は志賀理江子作品のファンです。

 

作品集もすべて持っているわけではありませんが、

『Lilly』『螺旋海岸』、あと螺旋海岸の制作背景を綴った『螺旋海岸 notebook』は持っています。

 

『Lilly』を初めて目にした時の衝撃は忘れませんし、『螺旋海岸』を美術館で観た時の圧倒される気分は今でも覚えています。

 

 

というか、ちょっと今アマゾンで志賀理江子の作品を調べてみたら、もうほとんどが絶版になっていて中古で高値になってしまってますね。

 

うーん、買っておいてよかった…。

 

 

代表作の1つ『CANARY』は持ってなくて、

当時はあまり心が惹かれなかったのか買わなかったんですが、

でも今思えば買っておけばよかったなぁとも思います。

 

 

こういうのは一期一会。いつまでもあると思うなってことですね。

 

あと、出版物で言えば最新の『Blind Date』もまだで。

 

 

書店では見たけど未購入なので、これも早いうちに買っておかないとですね。

 

『Lilly』の衝撃

『Lilly』について少し話を。

 

 

志賀理江子さんが持っている『生死』の感覚はこの頃から始まっています。

 

作風や作品の仕上がりは現在とは少し違っていますが、でもやはり非常に『死』の印象を濃く受けます。

 

だけど、現在のような人間の生々しさや、

日本の『喪』を感じさせるようなおどろおどろしいイメージ、

見えない大蛇が這い回っているような雰囲気はまだ少ないです。

 

そこにはまだ美しさがあって、不安な静寂、…冷たい割れたガラスのような印象があります。

 

そのヒヤリとした感覚が、非常に美しい。

 

音楽に例えるなら、『Lilly』はヨーロッパの現代音楽、現在の作風は日本の土着音楽という感じを私は受けました。

 

 

今見直してみても、この『Lilly』の美しさは本当に素晴らしくて。

 

初めて触れたとき、志賀理江子さんの感性や技法には非常に感動しましたし、その気持ちは今も変わってないです。

 

ヒリヒリした不安感。

 

その日は一旦帰宅したものの、忘れられなくて翌日に買いに行った思い出深い作品集です。

 

 

そんな志賀さんの作風は、

2作目『CANARY』から軌道が変わり、

『螺旋海岸』で生々しい恐れを見せるようになります。

 

『螺旋海岸』大きなもの

螺旋海岸の作品に初めて触れたのは、都内のどこの美術館だったか忘れたけど、とりあえずどこかで直接観たんですよね。

 

壁のように大きくプリントされた写真がパネルに貼られてフロア内に点々と置かれていたのですが、

ただでさえ強烈なエネルギーを発している作品が大きな存在感で展示されているものだからそのインパクトは非常に大きく、

私は声が出ないくらい圧倒されたのを今でも鮮明に覚えています。

 

よくあるように、壁に飾られて展示されていてもそれはそれで迫力はあったと思います。

 

だけどそうではなく、とてつもなく大きな存在感のある写真がフロア内にゴロゴロ転がっているわけで。

 

しかも一部の写真はうしろを向いていて作品が見えないものもありました。

 

そういう見せ方が、より人間臭さや、生と死、見てはいけないものというような概念を感じさせたのです。

 

 

『螺旋海岸』に収録された作品は、簡単に一言で言ってしまうと、「恐い」

 

日本の『喪』という観念や、どろどろとした重苦しさを感じるんです。

 

なのに不思議なのは、「恐い」だけで終わらず、そこからものすごい生命力が伝わってくるんです。

 

その圧倒的な生命力はなぜ、どの要素があるから感じるのか判然としないんですが、でも伝わってくるんです。

 

 

『神様』という概念がありますよね。

 

世界中にいろんな神様がいると思うんですが、日本にも八百万の神様がいます。

 

神様って姿は見えないから、感じることしかできないんだけど、

でも私が思うに、『神様』の存在をもし感じることができるのであれば、

それはこの『螺旋海岸』の作品を前にした時の感覚なんじゃないかなと思うんです。

 

『畏怖』という感覚でしょうか。

 

圧倒的で、何かとんでもなく得体の知れない大きなものを前にした時に覚える感覚。

 

恐いんだけど、でもグワーッと伝わってくる圧倒的な生命力。

 

いや、私は神様に出会ったことがないので分からないんですけど、でももし神様を目の前にしたら、そんな感覚だと思うんですよね。

 

偉大すぎて、何も言えなくなるというか。

 

つまり何が言いたいかというと、

『螺旋海岸』から先日の『ヒューマン・スプリング』に至る志賀さんの作風には、

神様が持つ『恐れ』のような感覚がある、ということです。

 

少なくとも私にはそう感じます。

 

 

そうそう、以前青森県の恐山に行ったことがあるんですが、その場で受けた感覚と非常によく似ています。

 

日本人の根源というような、土着的な何とも言えない圧倒的な感覚。

 

そういうものを、志賀作品から私は感じるんです。

 

 

でも……、『死』もまた、そういう圧倒的な感覚ですね。

 

『ヒューマン・スプリング』が放つ信仰的感覚

先ほどから私、「感覚、感覚」という言葉ばかり使っていますが、

私は専門家じゃないので「ここがこうだとかああだとか」難しいことはよく分かりません。

 

なのでどうしても私が感じたことがそのまま文章になるのでご了承くださいね。

 

 

そんな『螺旋海岸』からの、『Blind Date』からの、

新作『ヒューマン・スプリング』ですが、

これもやっぱり圧倒されてしまいました。

 

東京都写真美術館での展示方法はやはり螺旋海岸と似ていて、

壁のように大きくプリントされた写真がパネルに貼られて箱型にされ、展示されています。

 

一目見て心臓にズシンと来ました。

 

 

この展示会について志賀さんが語っている記事があります。

▶︎▶︎志賀理江子が写す春。輝かしく溢れる生命と、腐食から訪れる死

 

これを読むと、私が先ほど『螺旋海岸』で感じた印象はあながちズレてないんだなと思いましたが、

それにしても前々から思っていましたが、非常によく思索している人だなという印象です。

 

日本の土着信仰をベースに作られた作品だから、

やはり生と死を感じるし、

生命力、はたまた『神的な恐れ』を感じるんだなと思いました。

 

 

志賀さんって『Lilly』の頃から非常に深くものを考える人…、考えるのもそうですし感じるのもそうですが、…という印象があります。

 

彼女の言葉を聞いても、私の理解力では全部なるほどそうですねと咀嚼することは難しいです。

 

でも彼女の言葉は私を、志賀さんの言葉の中に込められた観念の世界に連れて行ってくれます。

 

理解ではなく、感じることができるんです。

 

それもまた、志賀作品に魅了される理由の1つかもしれません。

 

 

『ヒューマン・スプリング』ではやはり、『螺旋海岸』の時に感じたのと同じ圧倒的な印象を受けました。

 

なんだかこの世界観に呑み込まれたような感覚でしたね。

 

 

でもなんだろう。

 

現代は都市化が進んで、文明も発展してデジタルな世界になって、『土臭いもの』という感覚が非常に薄くなりましたよね。

 

私もそれにずっと慣れてしまっていた。

 

でも、青森県の恐山に行ったとき、「ああ…、日本人はここから始まったんだ」みたいな感覚を持ったんです。

 

どれだけ時代が発展し、生活が変わっても、

日本人の根幹には『霊的な感覚』や『土着的なもの』『恐れ』というものがあるんだな、

という感覚を、恐山の空気から私は感じたんですよね。

 

 

『ヒューマン・スプリング』を見ていても、形は違えど、やはりそんな印象の一端を感じさせられました。

 

日本の土着信仰をベースに作られている作品だから、そう感じても不思議はないのかもしれません。

 

作品は禍々しくて、見えない大蛇が這っているような恐ろしい印象を放っていますが、でも不思議と心が安らぐというか、、、

 

私はそんな印象だったんです。

 

 

それにしても、表面的な話をすると、

この一連の作品群を作るためにたくさんの人が関わっているわけですが、

これだけの人をまとめて撮影をしていくというのは並大抵のことじゃないだろうなと思います。

 

セットも非常に大掛かりだし。

制作工程を想像してもいたく感動させられます。

 

だから余計に圧倒されるんですけどね。

 

志賀さんという写真家は考える力、感じる力も凄いと思いますが、行動力やコミュニケーション力もとんでもないと私はつくづく思うんです。

 

最後に

というわけで今回は、志賀理江子さんの『ヒューマン・スプリング』についてレポを書いてきました。

 

もしかしたら『Lilly』を知らなかったら、その後の作品にもこんなどっぷり触れることはなかったかもしれない。

 

そう思うと、当時出会えて本当よかったなと思います。

 

本当に素晴らしい作品を生み出す人だと思います。

 

これからどんな作品を生み出していくのかも非常に楽しみですね。

 

以上ここまで、ありがとうございました。^^

 

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